「MEC Award 2016(Media Explorer Challenge Award 2016)」

MEC Award 2016 入選作品展

Explorer(エクスプローラー)とは、冒険者、探求者という意味です。
SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアムでは、2012年から、映像表現の明日を担う才能を発掘、積極的にバックアップする公募展「MEC Award—Media Explorer Challenge Award—」をスタートさせました。

【MEC Award発表】

受賞作品:「ズドラーストヴィチェ!」

受賞作品:「ズドラーストヴィチェ!」
2015年/映像インスタレーション/5分38秒
受賞者:幸洋子 Yoko Yuki(共同制作者:窪田薫、滝野ますみ、伊東俊平)

受賞者コメント
大賞を受賞してすごく嬉しいです。
MEC Awardの会場で展示できるということで嬉しいですし、すごく勇気づけられました。
作品は実際の話なんですがちょっと不思議な話になっていて表現する上で、その“さじ加減”をどう出すか悩みました。観てもらった方に一緒にその不思議な一日を体験してもらい「面白かったな」と思ってもらえると嬉しいです。

塩田 周三氏(ポリゴン・ピクチュアズ代表取締役)
ともすれば何もない日常が彼女の目を通すと楽しく不思議な体験になる。
本作品と展示は彼女の楽しく不思議な日常を垣間見るようです。

ゲスト審査員 TAKCOM氏(映像ディレクター/アートディレクター)
映像単体で観ても楽しい作品だったが空間の演出も含めてさらに幻惑的な体験に昇華されていた。
戸惑うほどのインパクトがあった作品。

集合写真

【MEC Award 2016 SKIPシティCMコミッション発表】
本年度から開始された入選者の中から1名に、SKIPシティのCM制作を委託するSKIPシティCMコミッションは
MEC Award 2016大賞受賞者の幸洋子さんに決定いたしました。
完成は次年度のMEC Award2017開催期間中を目指します。

【入選作品発表】
2016年1月末、彩の国ビジュアルプラザにて審査員4名による入選作品選考会が行なわれました。今年は69組、77作品のご応募があり、厳正なる審査の結果、入選5作品、佳作10作品を選出いたしました。入選5作品は3月5日(土)~3月27日(日)に開催される「MEC Award 2016 入選作品展」でご覧いただけます。

【入選5作品(50音順)】※実際の展示方法は写真とは異なる場合がございます。

「母よ、アニメを見よう」 2015年/映像/11分36秒

阿部舜 Shun Abe
2014年 多摩美術大学美術学部情報デザイン学科情報デザイン専攻 卒業
現在  東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻 在籍

「母よ、アニメを見よう」
「母よ、アニメを見よう」

「せまい部屋に雨が降る」 2015年/映像インスタレーション/3分12秒

鹿野洋平 Yohei Shikano
2015年 多摩美術大学美術学部情報デザイン学科メディア芸術コース 卒業
2015年 東京藝術大学大学院 映像研究科メディア映像専攻 在籍
Web:http://shikanoyohei.tumblr.com/  

「せまい部屋に雨が降る」
「せまい部屋に雨が降る」

「Holy Shit!」2015年/アニメーション/6分3秒

澁谷岳志 Takashi Shibuya
2012年 信州大学理学部地質科学科 卒業
2015年 東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻 卒業

「Holy Shit!」
「Holy Shit!」

「Erg Chebbi」 2015年/映像/5分36秒

高橋昂也 Koya Takahashi
2011年 東京藝術大学大学院デザイン科 卒業
現在  フリーランスの映像作家として活動

「Erg Chebbi」
「Erg Chebbi」

「ズドラーストヴィチェ!」 2015年/映像インスタレーション/5分38秒

幸洋子 Yoko Yuki(共同制作者:窪田薫、滝野ますみ、伊東俊平)
2015年 東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻 卒業
現在  映像作家として活動

「せまい部屋に雨が降る」
「せまい部屋に雨が降る」

【賞】

■MEC Award(1作品)
入選作品5点のうち1点に授与。
●副賞:彩の国ビジュアルプラザ内施設の100時間までの無償利用権を授与します。
(利用できる施設:HDスタジオ、映像ホール、編集室、MA室、レンタル機材、他)

■MEC Award 入選(5作品)
入選5作品は、「MEC Award 2016 入選作品展」にて展示

■SKIPシティCMコミッション(1名/グループ)
入選者の中から1名に、SKIPシティのCM制作を委託
●制作費として15万円(税別)を支給
●CM制作において彩の国ビジュアルプラザ内施設を無償利用できます
※本コミッションを依頼する1名/グループの選出は、SKIPシティ映像ミュージアムが行います。
本年度から開始!

【佳作10作品(50音順)】

※会場内でループ上映いたします(インスタレーション作品の場合は作品資料映像を上映)
◆「物騒な夜」 2015年/アニメーション/4分22秒
池亜佐美 Asami Ike(楽曲提供:melu:)

◆「永遠に関する悩み」 2015年/映像インスタレーション/7分33秒
石原海 Umi Ishihara

◆「すこやかな歪み」 2015年/アニメーション/3分12秒
片山拓人 Takuto Katayama

◆「KILIMANJARO」 2015年/映像/9分57秒
齋藤佳憲 Yoshinori Saito

◆「堀川出水入る」 2015年/アニメーション/4分18秒
谷耀介 Yosuke Tani

◆「ブレイクタイムNO.2」 2015年/映像インスタレーション、パフォーマンス/13分27秒
玉木晶子 Akiko Tamaki

◆「くつしたをつなげて」 2015年/映像インスタレーション/11分11秒
塚越ひかる Hikaru Tsukagoshi

◆「sasanomaly 共感覚おばけ」 2015年/ミュージックビデオ/3分21秒
牧野惇 Atsushi Makino

◆「ボンとハレトモ 〜古代遺跡で大慌て〜」 2015年/映像インスタレーション/11分16秒
武藤亮人/uwabami Akihito Muto/uwabami(共同制作者:原田薫)

◆「歯とコイン」 2015年/映像インスタレーション/4分9秒
山崎スヨ Suyo Yamazaki

【審査員】(50音順・敬称略)

本年度はゲスト審査員にTACKOM氏を迎えて、4名の審査員で審査しました。

塩田周三(ポリゴン・ピクチュアズ代表取締役)

塩田 周三(ポリゴン・ピクチュアズ代表取締役)

2003年の代表就任以来、海外のTV シリーズや海外市場をターゲットにしたコンテンツ企画開発を推進。アルス・エレクトロニカ賞(オーストリア)、SIGGRAPH(アメリカ)、TBSDigiCon6他、国内外の有数映像コンテストの審査員等を歴任。2008年には米国アニメーション専門誌 Animation Magazine が選ぶ「 25 Toon Titans of Asia(アジア・アニメーション業界の25傑)」の一人に選定された。また、2012年にはTVアニメ「Transformers: Prime」のエグセクティブ・プロデューサとして第39回 デイタイム・エミー賞を受賞する。

応募作品に関する総評

二次元のスクリーンを超えて、空間を思う存分使い作品を表現できる場はそうそう無いので、MEC AWARDの最終審査は作家にとって何よりも贅沢な機会であると思う。映像並びに資料審査を経て選ばれた入選五作品が、この空間をどのように使い切り変貌するのかと想うといつもワクワクする。 一次審査時から展示形式が興味深かった「せまい部屋に雨が降る」は実際に想像以上に面白かった。また、壁面一面に投射された「Erg Chebbi」はかなり迫力があり、トリッピーだった。願わくば音響がもっと良ければ、もっと没入感が増したであろう。ただやはりMEC AWARDに輝いた「ズドラーストヴィチェ!」の幸洋子さんが作り出した空間は圧倒的だった。ノッている作家の勢いは本当に自由で気持ち良い。饒舌な作品が更に豊かになっていた。

四方 幸子(キュレーター) Photo: 土田祐介

四方 幸子(キュレーター)

情報環境とアートの関係を横断的に研究、キヤノン・アートラボ(1990-2001)、森美術館(2002-04)、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC](2004-10)と並行し、フリーのキュレーターとして先見的な展覧会やプロジェクトを数多く実現。2010年より「拡張されたキュレーティング」を提唱。札幌国際芸術祭2014アソシエイトキュレーター、メディアアートフェスティバル AMIT(Art, Media and I, Tokyo)ディレクター。多摩美術大学・東京造形大学客員教授、IAMAS(情報科学芸術大学院大学)非常勤講師、明治大学兼任講師。

応募作品に関する総評

4回目を迎え、さらに応募の質が高まった今回の審査で選出した作品は、入賞・佳作ともに個性的で領域をまたぐものが多かった。かつてない映像表現の可能性に挑戦する「MEC」らしさが認知され始めたように思う。とりわけ入賞作は、アニメと実空間/自身と母親(阿部)、知覚と空間(鹿野)、意味と無意味(澁谷)、抽象と形態(高橋)、フィクションとドキュメンタリー/社会の裏表/過去と現在(幸)など既存の境界領域を果敢にぶらし見ごたえがあった。MEC Awardに輝いた幸作品は、展示の上での最終審査というこのアワードの特徴をフルに活かしたインスタレーションで、アニメーションの実力とともに作者の新たな魅力を開示した。今回、多彩な専攻や経歴をもちつつも、全入賞者そして佳作の何人かが東京藝術大学を経ている事実を確認したが、今後より多方面からの果敢な作品を期待している。

森 弘治(アーティスト)

森 弘治(アーティスト)

映像作品を中心に現代美術の分野で活動。主な展覧会に、第3回恵比寿映像祭、越後妻有アートトリエンナーレ2009、第52 回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際企画展、原美術館「アートスコープ2005/2006」、ジュ・ド・ポーム国立ギャラリー「The Burlesque Contemporains」(フランス)など国内外で作品を発表。また、2009年にアーティスト主導による芸術支援システム「ARTISTS` GUILD」を設立。現在は共同代表。

応募作品に関する総評

今回で4回目を迎えるMEC Awardは、募集作品全体として質が高く、多様な映像作品が数多くありました。その中でも特に目を引いたのはアニメーション作品でした。
ショートリストに選ばれた5名の作品は、映像媒体だけに左右されることなく、物語を通して思想や社会状況を反映した事柄を作品の中に展開し、それによって個性の獲得に成功していると思いました。最優秀賞を受賞した幸洋子さんの作品は、手書きアニメーションとリズムの良いナレーションで、横浜の街を舞台に出会ったストレンジャーとの物語を上手に作品の中で紡ぎ出しているところに多くの可能性を感じ評価をしました。展示では、アニメーション映像に加えて他の要素を用いて現実空間へ展開し、作品が成立しているところも素晴らしいと感じました。
最終的に展示された5作品を鑑賞した時に、どの作品も完成度が高く映像表現の可能性を更新していることも確信でき、若い世代の表現者サポートし続けるMEC Awardの役割はとても重要であると感じました。

TAKCOM(映像ディレクター/アートディレクター)

■ゲスト審査員
TAKCOM(映像ディレクター/アートディレクター)

数十カ国のアートフェスティバルやギャラリーへの参加/作品招待等を通じて、国内外から高い評価を得る。活動媒体は幅広く、アウトプットのフォーマットも含めて新しい表現を探求している。特に高精細な画作りには定評がある。2013年「森ビル 六本木ヒルズ-TOKYO CITY SYMPHONY」(映像演出担当)カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルCyber部門SILVER受賞、ADFEST PROMO LOTUS/GOLD賞、D&AD AWARD Yellow Pencil受賞。2014年「ソニー銀行 ATM」交通広告グランプリ2014デジタルメディア部門 最優秀部門賞受賞。

応募作品に関する総評

若い世代の映像表現はもはや単にプラットフォームに乗っ取った制作をするところまで、では終わることがない。一見ジャンルに寄り添った作品でさえ、最終的には柔軟に姿を変え、軽やかにフォーマットを越えていく。
プラットフォーム自体もどんどん可変していく時代、映像表現という枠組自体の捉え方に妙なこだわりを持つことなく、自覚的にしろ無自覚的にしろ、パーソナルなレベルでの周囲との関係性や、受け手への伝え方という本質的なところに関心があり、追求しているように思えた。今回審査した中では、やはりそこをダイレクトに表現しやすい、アニメーションを軸にした作品の印象が強かった。
特に大賞のズドラーストヴィチェ!は単にアニメーションとしての魅力の高さにプラスして作品世界を展示空間で何度も反芻出来るだけの強度、展開力を示した。高橋昂也による、Erg Chebbiは、応募作の中、唯一と言っていいほど、果敢に映像のマチエールを追求した作品だ。一見安易なエフェクト処理にも見える危険性をはらんだ、記号的で抑制された表層の裏に、実はプリミティブで根源的なアニミズムを内包し、作家自身の体験した時間や場所の記憶の変遷を表現した。他の三点も、作家達の表現の更なる展開を期待出来る越境的で横断的な作品の展示になっている。
若い映像制作者にとっては全く異なる出自を持つ審査員の目にさらされ、他作品と勝負の場があり、展示をすることによって、自作品の強さが試される機会を持てるというのは、非常に貴重だ。これからも軽妙と柔軟さを失わずに飛躍していくことを願う。

【MEC Award アーカイブ】

主催:埼玉県
企画:株式会社デジタルSKIPステーション