「MEC Award 2013(Media Explorer Challenge Award 2013)」

MEC Award 2013 入選作品展

映像表現の新たな可能性に果敢にチャレンジする映像作家やアーティストたちは、映像の世界を開拓・冒険するMedia Explorer(メディア・エクスプローラー)と呼ぶことができるでしょう。彼らを積極的にバックアップすることを目的とし、SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアムでは公募展「MEC Award—Media Explorer Challenge Award—」を2012年からスタートさせました。本入選作品展では、第一線で活躍する審査員により選ばれた5組のMedia Explorerの作品を展示いたします。映像表現の明日を担う若き才能の力強い第一歩をぜひご覧ください。

【入選作品発表】

2013年2月28日[木]彩の国ビジュアルプラザにて、審査員3名による入選作品選考会が行なわれました。今年は103組、123作品のご応募があり、厳正なる審査を行い、入選5作品、佳作10作品を選出いたしました。入選5作品は4月13日[土]~5月26日[日]に開催される「MEC Award 2013 入選作品展」でご覧いただけます。

【MEC Award発表】

受賞作品:「悲しみのためのテスト」
受賞者:橋本玲美
プレスリリース - MEC Award 2013受賞者決定(pdfファイル)

【入選5作品(50音順)】※実際の展示方法は写真とは異なる場合がございます。

「きいろい はらっぱ」 2013年/5分35秒

落合陽三 Youzou Ochiai

プロフィール:
2012年 「富士水辺の映像祭2012」ゴールドサンダー賞受賞
2013年 武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業
落合陽三HP  

作品紹介コメント:
幼い頃の私は毎日のように外で遊んでいました。外では様々な動植物と触れ合い、今よりも自然を密接に感じていました。そして、今よりも柔軟な発想で、自由に妄想を広げ、広大な想像の中で駆け回っていました。自身の幼少期の記憶の断片から創作した物語をアニメーションで表現しました。

「きいろい はらっぱ」
「きいろい はらっぱ」

「transform」 2013年/2分19秒  ※インスタレーション

佐々木成美 Narumi Sasaki

プロフィール:
2010年 東京藝術大学美術 学部絵画科油画専攻入学(現在在籍中)
佐々木成美HP  

作品紹介コメント:
主体を含む環境は、常に絶え間なく変容しており、その形をとどめることはない。 その事を主軸に私の作る世界は出来ています。
「transform」では変容をテーマに、自身の物語の一部を提示したいと考えています。

「transform」
「transform」

「テンポラリーセミナールーム」 2013年/8分19秒 ※インスタレーション

高橋理佳子 Rikako Takahashi

プロフィール:
2012年 「第18回学生CGコンテスト」ノミネート(関真奈美との共同制作)
2013年 武蔵野美術大学造形学部映像学科卒業
佐々木成美HP  

作品紹介コメント:
自分で撮ったビデオをみるというのは、過去の自分に会いに行くんだけどオバケ的なものなので全く干渉出来ないみたいな状況だなと思うのですが、でも考えてみたらビデオって編集出来るのでこれって結構な干渉であり、過去の自分からすればなかなか癇に障るというか、「カットするなら先に教えて」みたいな気持ちになります。

「テンポラリーセミナールーム」
「テンポラリーセミナールーム」

MEC Award受賞作品

「悲しみのためのテスト」 2012年/15分00秒

橋本玲美 Remi Hashimoto

プロフィール:
2010年 文化学院デジタルデザイン科卒業
2013年 阿佐ヶ谷美術専門学校イメージクリエイション科卒業

作品紹介コメント:
「世界で一番不幸な人」のイメージを想像してもらい、屋上で世界中の不幸な人たちを代弁してもらう。不幸を演出するとはどのようなことなのだろうか?過剰に演出された「悲しみ」を見るとき、本当は何を見ているといえるのだろうか。

「悲しみのためのテスト」
「悲しみのためのテスト」

「jewel」 2012年/14分11秒

福田真知 Masakazu Fukuta

プロフィール:
2006年 成安造形大学造形学部造形美術科彫刻クラス卒業
2012年 「SURFACE/フンイキ」(アートスペース虹、京都)
2012年 「群馬青年ビエンナーレ2012」入選
2013年 「jewels」(KUNST ARZT、京都)
jewelsスペシャルサイト  

作品紹介コメント:
ある時は、一時で 移ろいどこかへ行ってしまうし、ある時は 一瞬で、だからこそキラキラしている。宝石はキラキラしながら美しく果てしない時を宿している。時を宿した宝石的なものはキラキラするのだろう。「jewel」は、女子高生の後ろ姿を"時"をかけて被写体とすることで、キラメキを捉えた作品です。

「jewel」
「jewel」

【賞】入選作品の中から「MEC Award」を決定いたします。

MEC Award(1点)※受賞者は4月13日[土]に発表。
副賞:彩の国ビジュアルプラザ内施設の100時間までの無償利用権(利用出来る施設:HDスタジオ、映像ホール、編集室、MA室、レンタル機材、他)

【佳作10作品(50音順)】

※会場内のモニターでループ上映いたします(インスタレーション作品の場合は作品資料映像を上映)

■「彼女のことをはなしている、彼女のことばで」 2013年/13分58秒 ※インスタレーション
遠藤麻衣 Mai Endo(共同制作者:稲継美保、坂田ゆかり、神谷智史、稲田禎洋  Miho Inatsugu、Yukari Sakata、Satoshi Kamiya、Yoshihiro Inada)

■「なんでもない」 2013年/4分6秒
川上彩穂 Ayaho Kawakami

■「Muted」 2012年/11分16秒
河ノ剛史+Hatori Yumi Takeshi kawano+Hatori Yumi

■「長い休日」 2013年/14分58秒
小濱史雄 Fumio Kohama

■「MamaDonald’s」 2013年/13分20秒 ※パフォーマンスも上演
田中良典 Ryosuke Tanaka

■「櫻本箒製作所」 2012年/9分16秒
告畑綾  Aya Tsugehata

■「新春ドストエフスキーかるた大会」 2012年/13分52秒 ※インスタレーション
橋本野々 Nono Hashimoto

■「雲を眺めて古きを落とす」 2013年/6分14秒 ※インスタレーション
林千歩 Chiho Hayashi

■「ホワイトノイズ」 2013年/7分10秒
藤原天生+西村祐貴 Fujiwara Takami+Nishimura Yuki

■「Pass Throughout」 2013年/7分55秒 ※インスタレーション
村田紗樹 Saki Murata

【審査員】(50音順・敬称略)

本年度はゲスト審査員にTACKOM氏を迎えて、4名の審査員で審査しました。

塩田周三(ポリゴン・ピクチュアズ代表取締役)

塩田 周三(ポリゴン・ピクチュアズ代表取締役)

2003年の代表就任以来、海外のTV シリーズや海外市場をターゲットにしたコンテンツ企画開発を推進。アルス・エレクトロニカ賞(オーストリア)、SIGGRAPH(アメリカ)、TBSDigiCon6他、国内外の有数映像コンテストの審査員等を歴任。2008年には米国アニメーション専門誌 Animation Magazine が選ぶ「 25 Toon Titans of Asia(アジア・アニメーション業界の25傑)」の一人に選定された。また、2012年にはTVアニメ「Transformers: Prime」のエグセクティブ・プロデューサとして第39回 デイタイム・エミー賞を受賞する。

応募作品に関する総評

今年は作品応募数の増加に伴い、展示方法に工夫を凝らした、アワード趣旨に沿った作品が多く見られた。勿論、審査は複雑化し、一次から三次審査に費やした時間が激増、審査員の間で多くの議論が交わされた。
そうやってウンウン唸りながら選ばれたMEC Award《悲しみのためのテスト》は意外にもストレートな映像作品。展示会場で迎えた最終審査で、本作を適切な空間、画面サイズ、ヘッドホンを介した音声で鑑賞した時に、今までに無い「強さ」を感じた。映像作品と雖もコンテンツを享受する為の「容れもの」が如何に重要かを改めて実感した。作家の橋本氏は昨年に続く応募で、作風は変わらずも大きな成長を遂げ、更なる大化けを予感した。
紙一重で最高栄誉に至らなかった入選作・佳作も秀作揃い、会場に足を運び御鑑賞戴く価値は大いにある。

四方 幸子(キュレーター) Photo: 土田祐介

四方 幸子(キュレーター、東京造形大学特任教授/多摩美術大学客員教授)

キヤノン・アートラボ・キュレーター、森美術館アソシエイトキュレーター、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]の特別学芸員を歴任。Transmediale(ベルリン)、eyebeam(ニューヨーク)アドバイザー、アルス・エレクトロニカ賞(オーストリア)、ナムジュン・パイク賞(ドイツ)他、国際フェスティバル等の審査員経験も多数。

応募作品に関する総評

2回目の今回、映像の可能性に果敢に向き合う多くの才能に出会うことができた。それは特に実写およびアニメーションで際立っていた。審査では多くの作品が議論にのぼり、結果として入選に加え新たに「佳作」10作品を選出した。MEC Award受賞作《悲しみのためのテスト》は、映像の求心力に加え演出を含め見せる大胆さと透徹したまなざしを突出した才能として評価した。Awardを競った《テンポラリーセミナールーム》は、映像をめぐる作者の思考スペースに観客が入るかのようなインスタレーションを実現した。群を抜く完成度の《きいろい はらっぱ》は感受性が光り、《transform》は荒削りだが独自の世界を創造している。《jewel》は詩的な映像の背後にある時間の連なりという技術・構造的視点が興味深い。今回の審査プロセスで、MEC Awardが応募者、受賞者、審査員やスタッフの皆さん、そして来場者とともに大きく育ち始めたことを強く実感した。

森 弘治(アーティスト)

森 弘治(アーティスト)

映像作品を中心に現代美術の分野で活動。主な展覧会に、第3回恵比寿映像祭、越後妻有アートトリエンナーレ2009、第52 回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際企画展、原美術館「アートスコープ2005/2006」、ジュ・ド・ポーム国立ギャラリー「The Burlesque Contemporains」(フランス)など国内外で作品を発表。また、2009年にアーティスト主導による芸術支援システム「ARTISTS` GUILD」を設立。現在は共同代表。

応募作品に関する総評

第2回を迎えるMEC Awardは、完成度や質の高い作品の応募が多数あり、難しい審査となった。前回にはなかった佳作を、10名選出したこともそれを裏付ける喜ばしいことである。審査では佳作受賞作品を含め、どの作品も甲乙付けがたい状況だったことを付記しておく。
ショートリストに選ばれた5名の作品は既存の映像表現にチャレンジしていることが伺えた。映像の美しさや技術の巧妙さではなく、問題意識を作品へ展開した時にそれを重層化して明確に提示し、独自の視点を獲得することに成功している。
最終的に展示された5作品を鑑賞した時に、どの作品も荒削りながら映像表現の可能性を更新していることも確信できた。若い世代の表現者が新しい映像表現を探求するという意味において、果敢にチャレンジする姿をサポートし続けるMEC Awardの役割はとても重要である。

会期 2013年4月13日[土]~5月26日[日]
開館時間 9:30~17:00(入場16:30まで)
休館日 月曜日(祝日の場合は翌平日)
会場 SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアム
映像ミュージアム入館料 大人¥500/小中学生¥250(常設展示もご覧いただけます)

ミューぽん

【MEC Award アーカイブ】

主催:埼玉県
後援:埼玉県教育委員会/川口市/川口市教育委員会
企画:株式会社デジタルSKIPステーション